2000年6月18日更新

 

 

「酒ほがひ」は吉井勇24歳のときの処女歌集。装幀、高村光太郎・口絵、木下杢太郎・カット、藤島武二という豪華版である。主に「明星」「スバル」に掲載の718首が収録されている。

 

 

 

中央公論社



 

 

 

 

 

 

犬が西向きゃ
主は・・・

 

 


河村邦比児

 それは、人によっては不思議な 光景に映るかもしれない。
「最近、太られたみたいですね」
「すっかり元気になられて」
 街角で、いや、もっと身近に住宅団地の一角で交わされる会話。
私自身も当初は、戸惑った。話しかけられた相手とは、ほとんど面識がないばかりか、会話など交わしたことさえなかったからだ。
ひょっとすると、女房の知り合いで、私のこともご存じなのかと思ったりした。
 間もなく、足下にうずくまって、主の話の終わるのを待っていた愛犬のことだと察しがついた。
 それ以来、犬の散歩だけでなく、周囲の会話を注意しているとなんと、この種の話しの多いことか。
 考えてみれば、会社人間にとって、会社以外のこと、人間関係も含めてだが、自分の住まいの周辺のことは、ほとんど家族まかせではなかったか。私もその例に漏れないが。それが、ある日、家庭生活に戻ってみると、いかに周囲のことを知らないか、愕然とした。
 それが、愛犬のおかげで、思わぬ世界が広がった。逆に最近では、自分の体のことを尋ねられているのに、「果たして、この人は、犬のことを言っているのだろうか」と瞬時ではあるが、思うことがあり苦笑するほどだ。
 「癒やし」ということがマスコミなどで言われるようになって、どれほどになるだろう。ペットも今では大きな役目を果たしている。知人には愛犬の命日には必ず墓参する人もいる。
 私が、どれほどの愛犬家なのか自信はない。元々、自分の気まぐれに始めたような散歩だったから。それでも、犬のお陰で何人の人と知り合えたか。間違っても足を向けては眠れない。




プロフィール

河村邦比児

邦比児は本名。号をどうしようかと思う前から「邦比児」さんてそのまま使えるわねと言われてその気に。五十年生まれでちょうど半世紀を生きました。新聞記者生活を経て現在は事務職。狂言が好きで野村万作の会の会場で、いろはさん、康世さんと知り合い、そのままいろはさんの指導を受けるようになりました。始めて三年というところ。酒も好きで、こちらはいろはさんのご主人の加藤さんに教えを乞うております。よろしく願います。

 



 

水無月 某日  雷除祭

阿蘇神社の雷除祭(らいじょさい)は、その名のとおり、”雷による災害がないように”という祭です。
本来ならば、電力会社や電話会社が参列しているはずなのに、どうしたことか、本日は私達夫婦のみ。
当然、マスコミの取材は夫に集中。

マスコミ   「何回目の参列ですか?」
夫     「3回目です。」
マスコミ   「何かそういう関係のお仕事ですか?」
夫     「電気関係です」
マスコミ   「ほう。」(観光客でなくてよかったという安堵の顔)
マスコミ   「雷除けのお札はどうなさっていますか?」
夫     「パソコンに貼ってますよ」
マスコミ   「ほ、ほう!」(やった、ネタに使えるぞという喜びの顔)

かくて、夫はテレビと新聞の地方版の一瞬(?)スターになったのでありました。

 

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2000年06月07日