究極の米焼酎を造るぞ!Project

2000年12月

 

このProject について

 

今や焼酎ブームとでもいうのでしょうか。いろいろな焼酎が、全国各地で飲まれています。
なかでも、芋焼酎が人気を集めているようです。何故芋焼酎なのかと考えてみると、ここ数年目覚しく品質の向上した、あの味、香りがとても美味なのです。
それに引き換え、米焼酎を見てみると、減圧蒸留の流行で限りなく甲類焼酎に近い乙類焼酎が大半。
常圧蒸留のものも最近復活してきてはいるものの、常圧蒸留独特の雑味雑臭が強く、永く熟成させなければ、美味しく飲めないのが残念です。
かと思えば、エステル臭ぷんぷんの、下手すればビニルかセメダインの臭いと間違えそうなものを吟醸香と称しているものなど。

売れるものを造るという気持ちもわかりますが、平行して良いものも造って欲しいと心から願うばかりです。

そこで、雑味や雑臭のないそれでいて、旨みのある米焼酎を造るぞ!となったわけです。
あらかじめお断りしておきますが、私は酒造メーカーではありませんし、酒販店でもありません。
酒や焼酎の造りに興味があり、趣味でプロデュースをやっています。

佐賀県の小松酒造さんの協力を得て、ほんとうに味のある、しかも雑味のない質の良い米焼酎を造るぞ!プロジェクトを発足しました。
納得いくものができるまで、このプロジェクトは続きます。またここでその造りの内容や経過を紹介していきます。

良い案や、間違いなどお気づきの点があれば、メールにてお知らせください。又、面白いのでやってみたいと思われるメーカーの方があれば、データや情報は全て提供いたしますので、その結果をぜひ教えてください。

座・酣々 座長 加藤敬一
スタッフNo.1 山中一義

 

 

1st Try

仕込み設計

  1. 原料は、酒造好適米「山田錦」を使用する
  2. 麹、掛米ともに精米歩合70% フーゼル油を減らすためと、たんぱく質を除去し上質の醪にするため
  3. 種麹は、清酒用の黄麹を使用 一般的には白麹が使用されますが、さっぱり感を出すために黄麹を使用
  4. 総破精(そうはぜ)型とし、麹歩合は36%とする。
  5. 麹室温度管理は、清酒用麹と同じ方法で行う
  6. 酵母は、協会7号を使用
  7. 汲水歩合は135%とする 一般的な米焼酎では150%から170%ですが、3段仕込みにするので減らします
  8. 最初に酒母を立て、その後3段仕込みを行う
  9. 醪最高温度は、20℃とする 高すぎては雑味雑臭が出てしまい低い過ぎては味が出てこない
  10. 醪日数は、11日から14日程度 ボーメ、アルコール度数、酸度、日本酒度を監視しながら醪の味を利いて蒸留
  11. 蒸留方法は、通常の減圧蒸留ではなく、65℃程度で蒸留する 通常の減圧蒸留では抽出されにくい成分を得る
  12. 蒸留後出て来る「フーゼル油」は、ろ過せず網で掬い取る 味と香りを重視するため
  13. 充分な熟成期間をおく 利き酒をしながら納得いく熟成が得られてから出荷する

この13項目をたたき台として、方向性を確認します。その結果をみて、修正を行い翌年2nd Tryで再び挑戦します。

 

 

醸造計画書 クリックすると見ることが出来ます。

醸造計画書を見ていただくとわかりますが、黄麹を使い清酒と同じ方法で麹を造り、同じく三段仕込を行います。
清酒と同じ造りにすれば、良い焼酎が出来るということではありません。
清酒には清酒に向いた醪、焼酎には焼酎に向いた醪があります。洗練された清酒の技術を取り入れて、焼酎に向く醪を造ることが重要です。
麹も、一般的に焼酎では、白麹を使用しますが、この焼酎では清酒で使用する黄麹を使います。
黄麹の場合は、麹室(こうじむろ)での温度管理が白麹と比べ全然違います。
黄麹を使用する理由は、雑味を出さないようにしクリアな味に仕上げるためです。
ただ、清酒の麹とは違って、焼酎に向いた麹を造る必要があります。

一般的に焼酎の場合は、二段仕込で造るのですが、清酒の造り方で言えば、一次仕込が酒母にあたり、二次仕込が「初添」(はつぞえ)となり、焼酎はここで仕込が終ります。
今回の焼酎は、この後更に仲添、留添と行い、焼酎の造りふうに言えば四段仕込、清酒ふうに言えば
三段仕込になるわけです。

更に詳しく説明しますと、一般的な焼酎の一次仕込は、麹+水に酵母を添加して約一週間ほど酵母の
培養を行います。その後、二次仕込として蒸米+水を加えます。

この焼酎では、一次仕込にあたる酒母造りは、麹+蒸米+水に酵母を加え、中温速醸(ちゅうおんそくじょう)という方法で糖化と酵母の純粋培養を一週間ほど行います。
その後、仕込が始まり「初添」(はつぞえ)、翌日は「踊り」といって、何もしません。その翌日仲添(なかぞえ)、更に翌日留添(とめぞえ)(どの仕込も麹+蒸米+水)、酒母から数えると計四回の仕込を行い、ここから十日から十四日ほどで、蒸留になります。

蒸留のタイミングは、醪を分析しそれを参考に、醪を直接利いてみて決定します。

この醸造計画書は、最初十月頃に作り、いろいろ変更を加えて、最終的にこの形にして十一月に小松酒造さんに渡したものです。
試験的に醸造するため、最初から沢山造るのも怖いので、清酒用の酒母タンクを使って醸造します。

 

目標とする酒質

常圧蒸留で造った米焼酎の味わいを持ち、減圧蒸留の透明感を残した、雑味、雑臭のない味にこだわった米焼酎を目標にしています。
味のある焼酎を飲みたい方、米焼酎をこよなく愛する方に飲んで頂きたい焼酎です。

 

出来上がった焼酎の銘柄

銘柄は「天の狼」。
夜空に天狼星(シリウス)がひときわ美しく輝きだす季節、焼酎の仕込みが始まります。
天狼星(てんろうせい)は、オリオン座の隣り、大犬座の中にある星で、またの名をシリウスといいます。
冬の夜空の中で、最も明るく輝いている恒星です。
この焼酎も、光り輝くようにと願いを込めて、「天狼星」から「天の狼」と名づけました。

 

雑記

私は酒販店ではないので、この焼酎が出来ても販売することはできません。
したがって、小松酒造さんの一銘柄として加わり、販売は、枚方市の「やまなか酒店」さんにお願いしています。
今回の醸造量は、720mlびんで500本ほどの予定です。
この焼酎は、日本酒の洗練された醸造技術を取り入れ、焼酎本来の味を追求し、米焼酎としては最高レベルの品質を目指しています。
仕込みは3月頃になる予定ですが、仕込が始まったら、逐一このサイトで報告する予定です。

2000年12月22日に、「天の狼」の商標登録願を出しました。
特許庁の電子図書館で検索してみても、同じものは無いので、1年くらいで正式登録になると思います。

余談ですが、初めて商標登録願を出してみて、オンライン登録が出来るのに驚きました。
自宅からのオンライン登録はできませんが、紙の書類を作らなくても、テキストファイルをフロッピーに入れて専用端末から、特許庁のサーバーにアクセスし、データを送るというものです。

費用は、登録出願時に21,000円。査定が終り登録OKのお知らせが来てから正式登録時に66,000円で、10年間有効の商標となります。10年後は更新費用として、151,000円で10年延長になります。

 

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