究極の米焼酎を造るぞ!Project

2002年4月12日 

蒸留

 

 

4月12日

今年の「天の狼」の蒸留をしてきました。
醸造計画書は、昨年のものと全く同じで、醪の温度管理を多少変更しています。
最高醪温度を昨年は17度Cとしたのを、今年は19度Cで行いました。
理由は、醪温度が低すぎると、蒸留した時にエステル臭が強く出て旨み成分があまり出てこないということが昨年の経験でわかったからです。
あとで詳しくデータを出しますが、今回の蒸留直前の醪データは、
酵母 協会7号
アルコール度数 19.8 %
酸度 2.7
日本酒度 +15

昨年に比べ、より理想に近づいてきました。
今年はとても良い醪に仕上がって、蒸留後の焼酎の味が楽しみです。

 

蒸留

早速蒸留にかかるために、前準備として醪を蒸留器に入れます。
入れ終わったら、蒸留を開始するわけですが、今回は初留部分を常圧蒸留とするために、先ず蒸留器の「空気注入バルブ」を開き、この状態で蒸気を蒸留器に送ればここから空気が抜けて常圧状態で蒸留ができることになります。

理論的にはこれで間違いないのですが、実際にやってみると醪温度がなかなか上昇してくれません。
普段は、減圧蒸留しか行ってないため、蒸気の圧力が1Kg/cuに制限されるよう弁がついています。
85度Cまで上昇するのに、4時間経過。
これが後で大変なことになるのですが、ここではまだ何も気づいていませんでした。
なんとか、常圧蒸留で垂れが始まり、早速利き酒してみるとアルコール度数85%程もある凄く濃いアルコールが出てきます。これで一安心あとはこのまま待ちます。

02.jpg (30890 バイト)

 

真空ポンプ

垂れてくるアルコール度数が25%程になった頃、つまり初留部分が終わる頃に常圧蒸留から減圧蒸留に切り替えます。
空気注入バルブを閉じ、真空ポンプを起動するのです。
ここで大失敗をしてしまいました。
予定通り空気注入バルブを閉じ、真空ポンプの起動スイッチオン。
ウーンという唸りだけで回転してくれません。
やばいと思い、すぐにスイッチオフ。
モーターが熱くなっています。
小松酒造さんに尋ねてみると、冷却用の水を出してからでなければスイッチをいれてはいけないとのこと。

水を出してもらい、おもむろに真空ポンプのスイッチオン・・・・。
何の音もせずシーン・・・・。
やってしまった。真空ポンプを壊してしまったらしい。
小松酒造さんにいろいろいじってもらえど、相変わらずシーン・・・。

とうとうやってしまった。えらいことになったぞ。
まてまて、そういえば私は電気関係の仕事を本業としているのです。
我にかえって基本から考えると先ずは電源は大丈夫なのか?
小松酒造さんにブレーカーを確認してくださいと言ってみるのですが、その気になってもらえず、小松酒造さんが別の動力の機械を真空ポンプのコンセントに刺して動作させてみれど動かず。
これにて、電源が切れていることが確実に判明。
やはりブレーカーが切れていて入れると動きだし、これにて無事真空引きも出来、ほっとしたところでした。

危うく真空ポンプを壊すところです。危ない、危ない。もっと慎重にやらねば。
中留も完全な減圧蒸留ではなく、中圧での蒸留にしたいので、空気注入バルブを調整し空気を入れながら蒸留を続けます。

03.jpg (29674 バイト)  39cm/Hg  (76cm/Hgで真空状態)



アルコール度数20%くらいから、完全な減圧蒸留にするため空気注入バルブを閉じます。
あとは、垂れてくる焼酎を利き酒しながら、どこで蒸留をストップするかのタイミングをみるわけです。
アルコール度数18%くらいの時の利き酒では、もう味も薄くなってきていてそろそろストップかな?という感じになっています。
ここからもう少し採っていよいよストップ。

あとは、蒸留器を止め溜まった焼酎をタンクに移し、蒸留粕を出します。
この蒸留粕を出す時に事は発覚しました。
あろうことか醪が焦げ付いているのです。
大変な事になってしまいました。
焼酎には焦げ臭が出なかったのは幸いですが、蒸留器の中に醪が焦げ付いているわけですから、掃除が大変です。
簡単に手でこすったくらいではびくともしません。
鍋で何かを焦げ付かせても掃除が大変なのに、鍋に比べれば巨大な蒸留器の底全面に焦げ付いた醪をどうやって清掃するかが問題なのです。

その日は夜も遅くなっていたので、丁重にお詫びをし帰宅しました。
翌日お昼頃小松酒造さんに電話をかけてみると、やはり朝から蒸留器の焦げ撤去作業にかかっておられる様子。
過酸化水素水を使うことで多少取れやすくはなったとのことですが、夕方また電話で聞いてみると、相当苦労されたようで、かなりきれいになったとおっしゃってました。

それでもまだ完全ではないようなお話。
来年は、こん回の失敗を2度としないようやり方を再検討し蒸留しますのでよろしくお願いしますと言ったものの、あまり良い返事はもらえませんでした。かなりダメージが大きかったようです。
もう造らないと言われると困ってしまいます。
来年で3造り目、ほぼ完全な「天の狼」が完成するはずなのです。
なんとか、来年も「天の狼」を造って下さい。お願いします。小松酒造さん。

 

反省

醪が焦げ付いた第一の原因は、蒸留時間が異常に長くなってしまったこと。
その原因は、空気注入バルブを開けて常圧蒸留をしたため、蒸気の圧力が低く設定されているので、加熱した空気がこのバルブより逃げてしまい、醪温度の上昇に時間がかかったこと。
これが最大の原因でした。
昨年は、醪温度を最高75度Cまで上げても焦げ付きが起きなかったことを考えると、今回の失敗の原因はこれに間違いないと思います。

 

今後の蒸留方法の検討

完全な常圧蒸留が出来ないとなると、どうやって目的とする味を引き出すかということです。
昨年は醪の温度を最大75度Cまで上げているのにもかかわらず、焦げ付きが発生していません。
蒸留時間が2時間40分程度と短い時間だったこともあります。
この事実から、来年の蒸留方法をどうやるかということが自然に導きだされてきます。
具体的には、空気注入バルブを開けず閉じたままで、真空ポンプのオンオフまたは、ポンプのバルブにて真空度の調整を行う。
ただし、空気注入バルブを閉じた状態で真空ポンプまたは調整弁を操作するので、蒸留器内の圧力が異常に上がらないよう注意して行わなければいけません。
これで、蒸留時間も3時間以内にできると思います。

 

今年の「天の狼」の酒質

蒸留ではいろいろと大変なことがありましたが、「天の狼」そのものは、焦げ臭も全くなくエステル臭もほとんど感じられず、味は甘みを伴なった奥行きのある味わい深いものに仕上がりました。
これから熟成させるので、更に良い香りと味に仕上がっていくはずです。
垂れ歩合も少しですが昨年より増えています。
良質の醪に仕上がったのが垂れ歩合を増やしたのだと思います。

 

昨年の「天の狼」の様子

昨年蒸留した「天の狼」は、現在カメに貯蔵され、穴倉入り口付近で熟成中です。
このプロジェクト最初の焼酎で、いろんなデータを採るために醸造したものなので、一般に「初留」といわれるものです。
ただ、初留として現在販売されている焼酎に比べると、エステル臭は少なく味のあるものになっています。
このままうまく熟成してくれれば、来年の夏前には「天の狼 創世紀」として発売できるかもしれません。
ただし、本数が非常に少なく予約販売になる可能性もあります。
購入に関して詳しくは「名醸の酒蔵 やまなか」へおたずねください。

 

 

バックナンバー

2000年12月 「天の狼」Projectについて
2001年03月 酒母仕込
2001年04月 蒸留及び最終データ

 

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